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金属イオンが還元剤を無駄に消費する|キレートで変える「効かない髪」への処方

薬剤が効かないのは、薬剤のせいとは限らない

縮毛矯正やパーマで「選定も放置時間も合っているのに還元が進まない」ケースありますよね?

その原因の一つが毛髪に蓄積した金属イオン(銅・鉄など)です。

金属イオンは2つの経路でサロンワークを邪魔します。

  1. 還元剤(チオール)の金属触媒酸化による消費
  2. 過酸化水素との反応によるラジカル発生(ブリーチ・カラー)

薬剤側のスペックを上げる前に髪の側の状態を疑う価値があります。

経路1:金属イオンはチオールを空酸化させる

チオグリコール酸などのチオールは銅や鉄といった遷移金属イオンの存在下で酸化が触媒的に促進されます。

2 R–SH + 1/2 O₂ → R–SS–R + H₂O(金属イオン触媒)

つまり還元剤はSS結合を切る前に金属イオンとの反応で自ら酸化されて消費されていきます。

薬剤の還元力表示が同じでも金属を多く抱えた毛髪では内部に届く実効還元力が目減りします。

「還元が浅い毛」と「還元剤を横取りされている毛」は軟化チェックでは区別がつきません…ここが厄介なところですね💦

経路2:銅イオン+過酸化水素はラジカルを生む

ブリーチや脱色ではもう一つの経路が問題になります。

銅イオンは過酸化水素とフェントン様反応を起こしヒドロキシルラジカルなどの活性酸素を発生させる触媒として働きます。

ラジカルはメラニンだけでなくケラチンタンパク質も無差別に攻撃するため以下のような結果を招きます。

  • 脱色反応の暴走とムラ
  • キューティクルの損傷
  • タンパク質の分解・脆弱化

銅の蓄積が大きい毛髪ではブリーチ時に異常発熱が報告されることもあります。

金属イオンは「色の問題」ではなく「反応制御の問題」です。

金属イオンはどこから来るのか

  • 水道水:配管由来の銅・鉄
  • プール:殺菌・藻対策に使われる銅イオン
  • 温泉:泉質によって含まれる金属イオン
  • 井戸水・地下水:地域によって鉄・マンガンが多い

ダメージ毛は多孔質でカルボキシ基などの吸着サイトも増えているため金属イオンを溜め込みやすくままたシャンプーではとれない。

日常の蓄積が施術当日の反応を左右します。

対策はキレート:条件安定定数とpHの話

金属イオンへの対策はキレート剤で金属を配位捕捉し反応系から外すことです。

キレート剤が金属を掴む力(条件安定定数)はpHに依存します。

一般的なキレート剤では酸性では配位座が水素イオンに占有されて力が落ちてしまいますが、キャンサー29に配合のキレート剤はアルカリ性に傾くほどキレート力は上がります。

ここが重要でパーマ・縮毛矯正の作業域はpH8~9前後のアルカリ域!!

ということでキレート剤は「最も必要とされる環境で、最も強く働く」設計として噛み合っています。

キャンサー29の全成分を読み解く

キャンサー29〈ヘアコンディショナー〉は、カラー剤・パーマ剤に5%ミックスして使う添加剤です。全成分から役割を読み解きます。

キレート系:2種類を併用する意味

  • エチドロン酸:ホスホン酸型のキレート剤。幅広いpHで安定し、カルシウムや鉄への捕捉に強い
  • エチレンジアミンコハク酸3Na(EDDS):アミノポリカルボン酸型、銅などの遷移金属への捕捉が強く生分解性を持つ点でも知られます。

得意な金属とpHプロファイルの異なる2種を併用し、捕捉の範囲を広げる設計と読み取れます(併用の意図は推論です)。
また最近はトリポリリン酸ソーダをキレート剤として使う美容師も増えてきましたが…

キャンサー29は遷移金属の封鎖が主目的に対して、トリポリリン酸ソーダは洗剤のビルダー(軟水化)が主目的とされるキレート剤でキャンサー29よりもキレート力が劣ります。

またキャンサー29は酸〜アルカリで安定して加水分解しないのに対し、 トリポリリン酸ソーダは水中で徐々に加水分解してピロリン酸→オルトリン酸になりキレート力が落ちます。

補強系1:トステア

  • アミノエチルチオコハク酸ジアンモニウム:2023年に登録された特許成分。システアミンとフマル酸から作られるチオコハク酸型の化合物で、硫黄をチオエーテルとして保持する構造が特徴です
  • 配合順位は中盤ですが、訴求の主成分として置かれています
  • 弊社のイージス(ジチオジグリコール酸製剤)にも配合されている成分です

補強系2:ファイバーハンス

  • ヒドロキシプロピルグルコナミド + グルコン酸ヒドロキシプロピルアンモニウム
  • 原料メーカー(Ashland)の公表機序は皮質へ浸透してケラチンとの間に新しい水素結合とイオン結合を作り内部構造を支えるというもの。自社試験では引張強度の向上(最大3倍)が示します。
  • 注意点として、SS結合を共有結合で架け直す成分ではありません。「支える」補強と「再結合」は分けて理解すべきです。また製品訴求で見かける「熱による架橋・形状記憶」は原料メーカーの公表機序には含まれていません。

その他の成分から分かること

  • アルギニンが水の次に来ています。塩基性アミノ酸による緩衝とアミノ酸補給の下地として配合しています。
  • シクロヘキサン-1,4-ジカルボン酸ビスエトキシジグリコール:ジカルボン酸エステル系の浸透・コンディショニング成分

実務上の注意点:カチオン化PPTの吸着が上がる

金属イオンが封鎖・除去されると毛髪表面の陰イオンサイトが空きカチオン化PPTの吸着率が上がります!
硬く感じる仕上がりになる場合はキレート剤ではなくPPT側の添加量を減らして調整してください。

使い方と材料費は現実的です。

  • 使用薬剤の総量に対して5%ミックス
  • 1000ml リフィル ¥6,600(税込)→ 100gの薬剤への添加で約33円

FAQ

Q. キレートすれば還元剤の濃度は下げられますか?

金属イオンによる消費が大きかった毛髪では、実効還元力が戻るため結果的に下げられる場合はあります。

ただし金属蓄積の程度は毛髪ごとに違うので一律に下げるのではなく軟化の進み方を見て調整してください。

Q. カラーやブリーチでも同じ考え方ですか?

はい。むしろブリーチでは銅イオンと過酸化水素のラジカル発生というより直接的な損傷経路があるため金属封鎖の意味は非常に大きいです。

Q. 毎回の施術で必要ですか?

金属の蓄積は生活環境(水質・プール・温泉の頻度)に依存します。

効きが悪いムラが出るなど発熱が気になるといった兆候がある毛髪ほど優先度が上がります。

まとめ

  • 金属イオンは還元剤を触媒的に消費し、ブリーチではラジカル発生の触媒になる
  • キャンサー29のキレート力はアルカリ性で上がり、パーマ・矯正の作業域と噛み合う
  • キャンサー29は「金属封鎖(エチドロン酸+EDDS)」+「補強(トステア+ファイバーハンス)」の2層設計
  • 薬剤の性能を引き出すのは、薬剤そのものより髪の側の状態

商品情報:キャンサー29〈ヘアコンディショナー〉1000ml リフィル ¥6,600(税込)/ 5+1セット ¥33,000(税込)





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