システイン添加で質感が上がるのはなぜ?「架橋」を図で読み解く
カラー剤(1剤+2剤の総量)にシステインまたはシステアミンを5%添加すると仕上がりの質感が上がります。
ハリコシが出てタンパク質の流出が抑えられているような手触りになる。
これはサロンワークで繰り返し経験してきたことです。
この記事ではその理由についての推論を書いていきます。
先に結論を言うと添加した還元剤は2剤の酸化でシスタミンやシスチンという「両端に手を持つ形」に変わりその両端が加水分解でほつれた毛髪の鎖同士をイオン性に留めているのではないか?と。
ちょうどホッチキスの針のような役割なのでここでは「分子ステープル」と呼ぶことにします。
※本記事はサロンワークの経験をもとにした推論であり実証された機構ではありません。
添加量は、1剤+2剤の総量に対して5%です。
ダメージがゼロになるわけではありません。ただし「分解したタンパク質が流れ出ずに、髪の中に留まっている」ような質感になります。
この「留まっている感じ」が今回の推論の出発点です。
具体的な使い方や使い分けは実践編の記事にまとめています。
→ システインとシステアミンの効果(https://wecobase.jp/blog/color/post-0-3/)
アルカリカラーは染料を入れる一方で毛髪のタンパク質を加水分解します。
ダメージの正体はこの「ほつれた端」と流出です。
逆に言えばほつれた端同士をその場で留めてしまえば流出は抑えられるはずです。

システアミンが酸化されてシスタミンに、システインが酸化されてシスチンになる構造図
システアミンとシステインはカラー剤の中で2剤の過酸化水素によって酸化されそれぞれシスタミンとシスチンになります。
これは毛髪のほつれた端と「つなぐ手」を両端に持った分子が髪の中で生まれます。

切れたケラチン鎖のカルボキシ基同士を、シスタミンがイオン結合で橋渡しする模式図
ここで言葉を精密にしておきます…
アミノ基とカルボキシ基が共有結合(アミド結合)を作るには通常は脱水縮合の条件が必要で水の中・常温のカラー工程で起きるとは考えにくいです。
なのでここでいう「架橋」という言葉はここでは正確ではありません💦
代わりに考えられるのがイオン性の橋渡しです。
水洗後の毛髪内ではシスタミン両端のアミノ基は NH₃⁺(プラス)に毛髪側のカルボキシ基は COO⁻(マイナス)になりやすい。
このプラスとマイナスの引き合いで切れた鎖同士をシスタミンが留める。
洗えば外れる弱い結合ですが、仕上がり直後の質感を支えるには十分あり得る働きになります。
シスチンの方が仕上がりが硬くなるのもこの図式で説明がつきますし
シスチンはアミノ基2つにカルボキシ基2つと、つなぐ手の数が多く留める点が増えればハリコシは強くなります。
分子ステープルだけで全部を説明しようとは思いません…効いているのはおそらく次の複合によるものです。
① 分子ステープル(イオン性の橋渡し)
ほつれた鎖同士を留め低分子化したタンパク質の流出を抑える。
② 水に溶けにくいシスチンの沈着
酸化されたシステインはシスチンとして毛髪内部に残りやすくこれ自体がハリ・コシのもとになる。メーカーの技術資料でもシステインが酸化されて不溶化したシスチンが内部に沈着しハリ・コシを与えるという説明がされています。
③ 酸化剤の肩代わり
チオール基は余分な過酸化水素を受け止める側にも回ります。
その分毛髪のSS結合がシステイン酸まで酸化され切ってしまう割合が下がる。
システイン酸が増えるほど髪は親水化して質感が落ちるのでこれを抑えること自体が質感の維持につながります。
使い方(5%添加の手順、臭い対策、イージスやマルチアシッドとの組み合わせ)は実践編をご覧ください。
→ システインとシステアミンの効果(https://wecobase.jp/blog/color/post-0-3/)
Q&A
Q. 「架橋」と言ってはいけないのですか?
A. 共有結合の意味での架橋は、水中・常温のカラー工程では考えにくい、というのが正確です。本記事ではイオン性の橋渡しとして「分子ステープル」と呼んでいます。言葉の置き換えですが、機構のイメージは大きく変わります。
Q. シャンプーで落ちてしまうのでは?
A. イオン性の結合は弱いので、持続は限定的と考えています。ただし②のシスチン沈着は残りやすい。仕上がり直後の質感と、その後の残り方は分けて考えています。
Q. ブリーチ毛にも使えますか?
A. 実践編の使い分けでは、軟毛・細毛・エイジング毛・ブリーチ毛にはTHE CYS、普通毛〜ダメージ毛・硬毛・太毛にはカール7を基本にしています。
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