
パーマ1剤の還元反応は式で書くとこうなります。
① KSSK + RSH ⇄ KSH + KSSR
② KSSR + RSH ⇄ KSH + RSSR
難しく見えますが、やっていることはシンプルです。
毛髪の中で手をつないでいる硫黄(S)の「つなぐ相手」が還元剤と2回入れ替わる。それだけです。
そして、この式で一番大事なのは「⇄」という記号です。
この反応は一方通行ではなく「行ったり来たり」するので、途中で釣り合います。これが平衡(へいこう)です。
だからこそSS結合は全部は切れず実際に還元されるのは全体の2〜3割ほどにとどまります。

つまり KSSK とは、「ケラチン同士が、硫黄の手でつながった状態」=SS結合がある毛髪の姿です。

KSSK + RSH ⇌ KSH + KSSR
還元剤(RSH)が近づくと、Sの相手が「もう一方の髪」から「還元剤」に交代します。
すると、髪の片方は KSH、つまり手に水素のふたがついた、自由な状態になります。
もう片方は KSSR として、還元剤と仮につながった中間の状態です。
ポイントは、①の時点ではまだ「片方だけ」しか外れていないことです。

KSSR + RSH ⇌ KSH + RSSR
もう1分子の還元剤が来ると、残っていた側も外れます。
髪は2つとも KSH になり、還元剤同士は RSSR になって役目を終えます。
2つの式を合わせると、全体はこうなります。
KSSK + 2RSH ⇌ 2KSH + RSSR
つまり…SS結合1つを外すのに還元剤は2分子必要ということです。
手が外れた毛髪はやわらかく曲げやすい状態になるためこのタイミングでロッドの形に沿わせ、2剤でつなぎ直すのがパーマの流れです。

⇄は、進む反応と戻る反応が同時に起きていることを表します。
両方が同時に起きるため交換はどこかで釣り合います。これが平衡です。
ここから、施術に直結するポイントが2つ読み取れます。
1. 放置しても還元は無限には進まない
この交換反応自体は平衡点で止まります。「長く置けば置くほど、どんどん切れる」という単純な話ではありません。
2. 還元剤が多いほど交換反応は進みやすい
反応物が多い側から少ない側へ釣り合いが移動するため、還元剤の濃度や量は平衡の位置を左右する要素になります。薬剤選定が還元力に直結する理由のひとつです。
ただし注意点として、平衡で止まるのは「この交換反応」の話です。
放置時間が長すぎれば、特にアルカリ膨潤など他の部分へのダメージは別途進みます。「平衡だから放置して安全」ではありません。

式の見た目に身構えず「誰と誰が手をつなぎ直したか」だけ追えば還元反応は読めます。

Q. RSHの「R」って何ですか?
A. 還元剤の本体部分をまとめて表した記号です。チオグリコール酸であれば、HS-CH2-COOH のうち、Sより先の部分がRにあたります。反応の主役はSとHの側なので式ではRと省略されます。
Q. 平衡なら時間を延ばせばもっとかかりますか?
A. この交換反応は平衡点で釣り合うため時間だけを延ばしても還元が進み続けるとは限りません。かかり具合を変えたい場合は時間よりも薬剤の濃度や毛髪の状態(膨潤の程度)を見る方が理にかなっています。
Q. 切れたSS結合は、2剤で元通りになりますか?
A. 2剤の酸化でS同士は再びつながりますがつながる相手は「ロッドで曲げられた新しい位置関係」での相手です。だから形が固定されます。還元で外れた結合のすべてが元通りつながるわけではありません。
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